2020.6.3 12:00

【ラグビーコラム】「ウィズコロナ」ラグビーでは不自然を強要される

【ラグビーコラム】

「ウィズコロナ」ラグビーでは不自然を強要される

特集:
ノーサイドの精神

 【ノーサイドの精神】「ウィズコロナ」「アフターコロナ」といった言葉を、よく耳にするようになった。大会開催や練習再開がままならないラグビー界でも、新型コロナウイルスとどう付き合っていくか、いろいろ試行錯誤している。

 国際統括団体のワールドラグビー(WR)は5月末、新型コロナウイルス感染リスク防止のための国内試合用試験的実施ルールを提案した。主な内容は、スクラムの組み直しの禁止、ラックとモールに参加するプレーヤーの人数の制限、スクラムとラック内でのボールのプレー時間を5秒から3秒に短縮、モールへの参加は1回のみとする、などなど。さらに、顔と顔が接近するようなタックルの禁止、試合中につばを吐く、はなをかむ、円陣を組むなどの行為の禁止の推奨なども加わった。

 これらは加盟協会や大会運営者が、感染状況や政府の措置に基づき、必要な場合に任意で選択できることになっている。必ずしも導入しなければいけないわけではない。WRはこの規則により、スクラムのコンタクト量を30%以上、ラック時のコンタクト量を最大25%、モール時のコンタクト量を最低50%低減することが可能だとしている。感染者との距離1メートル以内での接触が述べ15分以上あった場合に感染リスクが高いという定義を踏まえ、60以上の試合を詳細に分析してWRの専門部会である「競技規則レビューグループ」が導き出した規則という。

 しかし、実際にこれを試合で適用するとなるとかなりぎこちなくなってしまうだろう。つまり、「不自然」なのだ。スクラムを組み直さないといっても、ボールを入れる前につぶれたら、必ずどちらかの反則をとらなければいけないのか。顔と顔が近づかないタックルといっても、タックルの入り方は局面局面での体勢によって決まるもの。選手への制約が大きくなってしまう。

 WRが示した「ラグビー活動の安全な再開について」によれば、集会の制限、ソーシャルディスタンシング、移動制限などが含まれる「PST措置」の緩和段階によって、(1)トレーニングのみ(2)国内大会可能(3)国境をまたぐ大会可能(4)大陸をまたぐ大会可能(5)通常-の5段階で活動再開できるとしている。

 ただし、通常に戻るためには「ワクチンの完成」が必要。ラグビーがコンタクトスポーツである以上、疫学的に安全が保証されるまでは、どんな措置を施そうともジタバタ感は残る。新型コロナウイルスの厄介さは、ラグビーにこんな「不自然」を強要するところからもうかがえる。

田中 浩(たなか・ひろし)

「田中 浩」イメージ画像 1983年入社。ラグビーブーム全盛期に担当を約10年、その後デジタルメディア、ボクシング担当、アマ野球担当などを経て2008年から運動部一般スポーツ担当デスクを務め、14年秋に二十数年ぶりにラグビー取材の現場に復帰。秩父宮ラグビー場でトライ(高校都大会決勝)と東京ドームでヒット(スポーツ紙対抗野球)の両方を経験したのがプチ自慢の59歳。