2019.7.22 11:51

新海誠監督、リアルな心理描写の秘密は特殊な映画作りにあった?/芸能ショナイ業務話

新海誠監督、リアルな心理描写の秘密は特殊な映画作りにあった?/芸能ショナイ業務話

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新海誠監督

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 大ヒット映画「君の名は。」を手がけた新海誠監督の新作「天気の子」が19日に公開され、大きな注目を集めている。

 離島から東京に家出してきた少年・帆高と、祈るだけで天気を晴れにできる少女・陽菜の物語。天気がテーマだけに、新海監督が得意とする光の演出が冴え渡る。物語はテンポ良く進み、やがて大きな運命に翻弄される2人の姿に引き込まれていく。登場人物たちの細やかな心の動きの表現なども、さすがだ。

 新海監督の映画作りは特殊。本来、絵コンテを書いた後は作画を始めるが、監督の場合、作画の前に、ビデオ(V)コンテと呼ばれる“動く絵コンテ”を作る。

 未完成の絵をとりあえず実際に動かしてみて、一度、仮の完成品を作るイメージ。登場人物の声は全て新海監督が担当しているのだが、きちんと声を演じ分けている。音楽もこの時点で、その都度入れていく。これらの編集作業を全て一人でこなす監督は「ビデオコンテはすごく時間がかかる」と苦笑するが、早い段階から物語の全容を目と耳で知ることができ、改善点を議論できるのは、作画チームにおいても大きなメリットだ。

 先日、監督にインタビューする機会があったのだが、この特殊な映画作りが作品に良い影響を与えているのだなと改めて感じた。

 とくに早い段階からの音楽制作。「天気の子」では2017年の8月に、脚本の第1稿を劇中音楽を手がけるRADWIMPSのボーカル、野田洋次郎に送っている。その3カ月後にはメイン楽曲の一つ「愛にできることはまだあるかい」の原型版が完成。同曲を聴きながら、ビデオコンテを描き始めた。

 新海監督は「アニメーションの場合、(曲を頼む段階では)少なくとも絵コンテがあり、助監督がシーンに合う曲を割り振って、そのシーンに合わせて(アーティストが)曲を書いてきてくれるのが一般的だと思います。でも、僕たちは脚本を読んだ物語の印象から、まず曲を作ってもらうんです」と説明。「そうすると、違う作家、違う詩人から出てきた言葉がたくさん詰まっているので、そこからもらうものがたくさんあるんです。帆高は今、こういう気分なんだとかを逆に洋次郎さんから教えてもらったり。だったらこういうシーンを足そうとか。より(表現の)正解に近づいていく感じがするんです」と理由を明かす。

 また、最後に声をあてる声優たちの表現力も、正解のヒントになる。

 監督は「帆高は男性だし、自分と近いところにいますけど、とくに陽菜に関しては、晴れ女ですから。よく分からないですよ。それを最後に教えてくれるのがキャストです。陽菜が帆高に『もうすぐ晴れるよ』というシーンがあるんですけど、どういう気分で言っているんだろうというのは(森)七菜ちゃんが声をあててくれて初めて分かった気がします」としみじみ。「本当に楽しそうに言うんだなと。なんかワクワクさせる気分。ちょっと驚かせようと思って言っているんだなと。せりふ一つだけで言えば、なんとでも取れるせりふなんですよ。帆高を慰めているようにも取れるし、キャラクターとしてかわいらしく言っているようにも取れるし。俳優、女優が最後にしゃべってくれることで引き出されることがたくさんあります」と目を細めた。

 そんなさまざまなヒントを参考にしながら公開ギリギリまで編集作業にこだわった新海監督が自信をもって世に送り出した「天気の子」。まだ見ていない人は、ぜひ劇場に足を運んでみては?

      (まろ)