2018.6.12 12:00

新作のようなセルフカバーアルバムを発表した佐野元春/週末エンタメ

新作のようなセルフカバーアルバムを発表した佐野元春/週末エンタメ

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週末エンタメ芸能記者コラム

 ロックミュージシャンの佐野元春(62)が先月、セルフカバーアルバム「自由の岸辺」を発売した。

 同作は2011年に発売した「月と専制君主」に続くセルフカバーアルバム第2弾。1980年のデビューアルバム「BACK TO THE STREET」の収録曲「グッドタイムズ&バッドタイムズ」など、これまで発表した11曲をフォーク、ブルース、ジャズ、レゲエなど多彩なアレンジで蘇らせている。

 この作品はセルフカバーアルバムにありがちな懐古的な要素はみじんも感じさせない。新しく生まれ変わったサウンドに乗せた歌詞も、発表当初のみずみずしさを失うことなく新鮮なまま。逆に落ち着いたサウンドに乗せることで発表時より、大人の芳醇(ほうじゅん)さにあふれている。まさに現在進行形のメッセージとして受け取ることができる“大人のロック”で、新作のオリジナルアルバムといっていいほどだ。

 佐野は、これまでも歌い手として幅広い表現力で言葉を伝えてきた。正統派ロックサウンドで感情の高まりをシャウトすることもあれば、時にはポエトリーリーディング(音楽やリズムに乗せて詩を朗読するパフォーマンス)で発信することもある。

 諸説ではあるが、佐野は4枚目のオリジナルアルバム「VISITORS」(84年発売)で初めてラップ、ヒップホップの手法を取り入れたと言われている。歌詞の手伝え方に敏感な佐野は、今作では楽曲のリズムを落ち着かせることで、聞き手にダイレクトに言葉を伝えている。

 また、同作が珠玉の逸品に仕上がった要因の一つを挙げるとすれば、バックバンドを務めた佐野のパーソナルバンド、ザ・ホーボーキング・バンドの力量も忘れてはいけない。古田たかし(59、ドラム)、井上富雄(56、ベース)、Dr.kyOn(60、キーボード)、長田進(60、ギター)といった長年共にした凄腕ミュージシャンらが、佐野の伝えたいサウンドを忠実に、曲によっては期待以上に表現していることも大きい。

 1960年代に若者の大衆音楽として産声をあげたロックも、時を経て成熟した。このアルバムは、新しいロックが生まれたことを象徴する1枚だ。(宮田 剛)

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