2018.4.26 12:00

「西郷どん」から「王貞治」まで、講談師・一龍斎貞花の幅広い話芸に感銘/週末エンタメ

「西郷どん」から「王貞治」まで、講談師・一龍斎貞花の幅広い話芸に感銘/週末エンタメ

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テンポのいい話芸で観客を引き込む講談師の一龍斎貞花

テンポのいい話芸で観客を引き込む講談師の一龍斎貞花【拡大】

 NHK大河ドラマ「西郷どん」が、回を追うごとに熱を増している。大河好きの私は、4日、東京・中央区のお江戸日本橋亭で行われた講談会「第160回 一龍斎貞花の会」に出掛けた。

 講談師の一龍斎貞花(79)による演題は「西郷と大久保を活用 薩摩藩影の宰相 小松帯刀(たてわき)」。先週22日の「西郷どん」第15話では、西郷吉之助(鈴木亮平)の進言で上洛を計画した島津斉彬(渡辺謙)が急逝。今後、帯刀が久光の側近として斉彬の遺志を継ぎ、西郷、大久保を援護していくとあって実にタイムリーだ。

 高座にあがり、張り扇(はりおうぎ)で釈台をたたいて声を張る貞花師匠。帯刀の生い立ちから薩長同盟締結への参画や大政奉還への尽力、維新の立役者になったその生涯の物語を華麗なリズムで読み、「西郷どん」の豆知識も織り交ぜられた。講談を聞くのは初だったが、抑揚ある話芸に引き込まれ、いにしえの男たちが映像で浮かんでくるようだった。

 貞花師匠は1968(昭和43)年、29歳で講談師に転身。もともと講談好きで、サラリーマン(洋菓子メーカーのユーハイム販売員)時代、5代目一龍斎貞丈のもとに通っていた。

 「最初は素人講談でしたが、自分の将来を決めかねていたときに貞丈が他界。築地本願寺の葬儀に参列した際に流れていた講談を聞いて、腹をくくりました」。5代目の息子で、6代目を継いだ一龍斎貞丈(2003年他界)に入門した。

 愛知の実家は仏壇店で幼少時代から仏教が身近にあり、その教えから保護司としても活動。2005年には、更生保護活動の功績をたたえる法務省の「瀬戸山賞」を受賞。さまざまな顔を持つように、講談のジャンルも多岐にわたる。

 古典はもちろん、珍しいところでは企業からの依頼で社史の創作講談も複数行っている。野球にも精通しており、2010年には「王貞治物語」を披露。その際にはソフトバンク球団会長の王貞治氏も登壇し、話芸同様、広い人脈と経験から講談を生み出している。

 「『講釈師、見てきたような嘘をつき』とはよく言ったものですが、新作に取り組むときは関係者に話を聞いて組み立てていきます」。いわゆる「見てきたような~」の世界のみならず、綿密な取材活動の上に講談を成す姿勢に情熱を感じた。

 次回は5月3、4日の「パール判事と東京裁判」(東京・千代田区の靖国会館、午後0時45分開演。2日間で上下に分けての講談)。「西郷どん」シリーズも続き、8月2日の「第161回 一龍斎貞花の会」の演題は「武断西郷官僚大久保決別 西郷挙兵 英傑城山に散る」他一席。

 「講談を通じて人の道や相手を思いやる心、親子の絆など、当たり前だけれど大切なことを後世に伝えていきたいですね」。貞花師匠にとって講談とは人生そのもの。迫真の人間ドラマだ。また魅惑の話芸に身を委ねてみたい。(山下千穂)

一龍斎貞花(いちりゅうさいていか)

1939年(昭和14年)2月12日、愛知県江南市生まれ、79歳。本名、朱宮正喜。1976年に真打昇進。日本演芸家連合理事長。著著に「戦国武将に学ぶ生き残りの戦略」、「プロ野球武将列伝」、「法然上人」他。趣味は野球観戦、墨絵、旅行。

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