2018.4.18 12:00

桜はまだ咲いている……映画「北の桜守」(公開中)/週末エンタメ

桜はまだ咲いている……映画「北の桜守」(公開中)/週末エンタメ

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週末エンタメ芸能記者コラム
映画「北の桜守」での一幕(C)「北の桜守」製作委員会

映画「北の桜守」での一幕(C)「北の桜守」製作委員会【拡大】

 3月10日に初日を迎えた「北の桜守」。公開から1カ月以上過ぎ、関東の桜の木はすでに青々とした葉が茂っているが、こちらの「桜」はまだまだ見頃。製作・配給の東映によると、全国345の劇場で上映中だ(4月18日現在)。

 “吉永小百合の通算120本目の出演作”、また、北海道を舞台に小百合が主演した「北の零年」「北のカナリアたち」に続く“北の三部作最終作”という触れ込みで封切られた同作は、あれこれ言わず、母と息子、母と子の物語という説明に尽きると思う。

 1945年春、樺太(現サハリン)。江蓮(えづれ)てつ(吉永小百合)は製材所を営む夫(阿部寛)と2人の息子、従業員たちに囲まれ穏やかな毎日を送っていた。8月、ソ連軍の侵攻を受け夫は出征、てつと息子は樺太を脱出して命からがら北海道・網走にたどり着く。酷寒の地で頼る人のいない生活は困窮し、てつは、家を出てひとりで生きていけと次男の修二郎を送り出す。

 「映画を見て泣いたのは久しぶりです」。

 会社の同僚で営業職の30代半ばの男性が声をかけてきた。感情を表に出さず、黙々と仕事を進める日頃の彼からは想像できない言葉は、記者が「あなたも人間だったのね」と冗談を返したほど。感想を伝えずにはいられなかった彼の感動ぶりがわかる。

 貧しい家を出て、努力の末に成功をつかんだ修二郎(堺雅人)。社会的地位と財を得て、美しい妻もめとった。一方のてつ。修二郎が十分な仕送りをしているのにもかかわらず、昔と変わらず破屋に住み、テレビも冷蔵庫もなく、着るものにも頓着しない暮らしぶり。

 ああ、このすれ違い…。苦労した母の豊かな余生を願う息子と、何も求めない母。「もったいなくて使えない」という母の気持ちを理解しながらも、息子のやるせなさが漂う。

 初めてのバイト代、初任給、仕送り…。渡した贈り物が手つかずだったり、通帳になって戻ってきた、という経験がある人もいるだろう。真心を台無しにされた気がして、老親に嫌みな言葉を投げつけたことがある記者には、この親子の思いやりのすれ違いが心に残った。

 映画の時代設定、ドラマチックな背景が、現代ではなかなか実感できなくなっている母子にとってもっとも大事なものが何かを教えてくれる。「生きていること」。これ以上、母は息子に何も望まないのだ。

 劇場を埋める観客はサユリスト世代、女性のファンが多い。上映はゴールデンウイークころまでという。現役のサラリーマンにこそ見てほしい。(郡司美香)

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