2020.9.29 05:00

【甘口辛口】短所に目をつぶり「正代流」が開花 晩成の大器に番付の権威復活を期待

【甘口辛口】

短所に目をつぶり「正代流」が開花 晩成の大器に番付の権威復活を期待

初優勝を決め、賜杯を手に笑顔を見せる正代=両国国技館(代表撮影)

初優勝を決め、賜杯を手に笑顔を見せる正代=両国国技館(代表撮影)【拡大】

 ■9月29日 「天井を見ながら勝てるのは正代だけ」と言った親方がいた。前傾姿勢が基本の相撲で、正代の胸を出してそっくり返るような立ち合いは異色中の異色だった。東農大2年のとき学生横綱に輝き注目を浴びてプロ入りしたが、「あれじゃ大成しない」との声も聞かれた。その正代が秋場所、関脇で初優勝し大関昇進を確実にした。

 もともと馬力は十分で以前のようにもろ差しにこだわらず、どんどん前に出て圧倒した。「胸からいく立ち合いは変わらないが、最近は腰が一段低くなったことで出足の威力が増した。窮屈なもろ差しを狙わず、どちらかの脇を固めて出足を生かしている」とある親方は分析した。

 かつての人気大関貴ノ浪は長身で手足が長く相手を引っ張り込んでの外四つが多かった。吊り上げて豪快に振り回したが、相撲のセオリーには反した。しかし、師匠の二子山親方(初代大関貴ノ花)は「外四つでも腰が割れている。あれでいいんだ」と短所を長所として伸ばした。正代も短所に目をつぶったことで「正代流」が開花した。

 秋場所も新入幕の翔猿や入幕3場所目の若隆景ら若い力士が優勝戦線をかき回した。上位がどっしりしていないと大相撲の根幹となる番付の重みは薄れるばかりだ。全休した横綱白鵬、鶴竜は引退へ“秒読み”状態。貴景勝、朝乃山両大関もイマイチで正代は「家貧しくして…」現れた孝子のような大関でもある。

 新入幕で勝ち越した元横綱朝青龍のおい豊昇龍や10勝の琴勝峰。ともに21歳の新鋭もすぐに上がってきそうだ。場所ごとに優勝力士が変わる戦国時代も面白いが強い横綱、大関がいてこその大相撲。大器晩成の正代に番付の権威復活を期待したい。(今村忠)