2020.9.25 05:00

【甘口辛口】「ジャッカルの日」成功の最大要因は製作方針 小説も面白く、映画はそれを超えたともいえる稀有な例だろう

【甘口辛口】

「ジャッカルの日」成功の最大要因は製作方針 小説も面白く、映画はそれを超えたともいえる稀有な例だろう

 ■9月25日 今まで見た映画の中で最高の刑事は誰かと問われれば、迷わずクロード・ルベル警視と答える。1963年の設定で、ド・ゴール大統領暗殺を企てた冷酷なジャッカルを追い詰める、風采はあがらないが頭のきれる男。演じた仏俳優、マイケル・ロンズデールさん(享年89)の訃報を聞いて、73年のサスペンス「ジャッカルの日」のさまざまなシーンが頭に浮かんだ。

 暗殺阻止指令が下り助手にまず指示したのは「われわれは大統領に次ぐ権力者だと認識することだ」。専用電話10本と優秀な電話交換手、ベッドやコーヒーを用意させた。途方にくれず冷静沈着、できることからやる。決して手を抜かないことの大事さを教えてくれた。

 この映画の成功の最大要因は製作方針だと思う。原作は71年発売のF・フォーサイスの小説で、世界中の人が内容を知るベストセラー。元通信社記者ならではの知識、入念なストーリーに加え、各登場人物の心理を細かく描写した。だが、映画はアプローチを変えてF・ジンネマン監督が大げさな演出を排し、ドキュメンタリータッチのリアリズムに徹した。

 既成のイメージが強い役者を避け、ジャッカル役に無名のE・フォックスを起用。相手役のロンズデールさんも地味ではあるが、映画の一コマとして、はまっていた。

 原作は面白いが、映画はつまらないことは、ままある。「ジャッカルの日」は小説も面白く、映画はそれを超えたともいえる稀有な例だろう。ちなみに黒澤明監督が生前に選んだ100本の映画にも入っている。実際のド・ゴール大統領は天寿を全うした。結末が分かっていても最後までひきつける緊張感。ひげ面の名脇役の仕事を改めて見よう。(宮本圭一郎)