2020.9.15 05:00

【甘口辛口】横綱も総理も「粗製乱造」はろくなことがない 焦ってみこしを担ぎ上げる必要なし

【甘口辛口】

横綱も総理も「粗製乱造」はろくなことがない 焦ってみこしを担ぎ上げる必要なし

 ■9月15日 「総理大臣と横綱、なるのはどっちが難しいと思うかね」。昔、日本相撲協会の春日野理事長(元横綱栃錦)に聞かれ、答えに窮したことがあった。「横綱だよ。歴史と人数を数えてみろ」。自民党総裁選で圧勝した菅義偉新総裁は第99代の総理大臣に納まる。人数にすると63人目で横綱は直近の稀勢の里(荒磯親方)が72代(人目)だ。

 44代横綱栃錦の時代は52代35人目の鳩山一郎総理だった。両者の数は昔から似ているといわれるが、「相撲は300年近い。総理は初代伊藤博文からまだ100年ちょっと。人数は近いが歴史の長さから見れば価値が違う」と春日野さんは自慢していたものだ。

 競馬を愛した英国の政治家チャーチルの「一国の宰相より、ダービー馬のオーナーになる方が難しい」という名言に相通じる。初土俵から所要38場所で上がった白鵬も89場所要した稀勢の里も裸一貫、己の力で勝ち得た地位に変わりない。一方、総理の中には他に適任者がなく「みこしは軽い方がいい」と担がれた人もいたらしく、春日野さんの言う通りか。

 もっとも13日に始まった秋場所は白鵬、鶴竜両横綱が初日から休場した。複数の横綱全員が初日から不在は昭和58年夏場所の千代の富士、北の湖以来とか。総理が病気などで“休場”なら、指定された国務大臣が代行する。そうはいかないのが相撲でも、横綱がいなければいないなりに若手が土俵を盛り上げている。

 レベルが多少落ちても、押し合いへし合いの中から自然に最強の力士が出てくるのが相撲でもある。「横綱がいないと格好がつかない」と焦ってみこしを担ぎ上げる必要はない。横綱も、一時期そうだった総理も「粗製乱造」はろくなことはない。(今村忠)