2020.9.11 05:00

【甘口辛口】「10年に1人」が今や「1年に10人」の150キロ級球児 数値以上に大事なのは打者の体感

【甘口辛口】

「10年に1人」が今や「1年に10人」の150キロ級球児 数値以上に大事なのは打者の体感

 ■9月11日 2週4日間のプロ志望高校生合同練習会が終わり、参加118人で最も高い評価は150キロを出した福岡大大濠の山下だった。この大台クリアを今夏目撃するのは中京大中京・高橋、智弁和歌山・小林、明石商・中森と4人目。他にも全国に高校生の150キロ投手は10人はいるようで、この多さにむしろ驚く。

 名スカウトと言われた木庭教さん(故人)に1990年代前半に聞いた話だが、当時高校生は公称140キロがプロの目安で、それも「あれはウソ。どこかで初速で出たかもしれんが。ワシは終速を見るから」。その頃のスカウト携行スピードガンは初速と終速を表示。「終速140キロで対象だが、最近では嶋田弟(章弘)だけじゃった」と84年に箕島から阪神と木庭さん在籍時の広島が競合し、阪神に指名されたドラフト1位の名を挙げた。初速と終速の差は投手によって約5~8キロで、補正しても初速150キロには届かなかったことになる。

 ある年配スカウトは「あの頃初速150キロは野茂(新日鉄堺、89年近鉄1位)だけ」と振り返り、最近の速さを「ガンの性能とスピードへの意識の違い」という。「昔はスピンの効いた質のいい球を目指したが、今は球数を投げずウエートや基礎練習で、スピードが出るパワー投法をしている」。体格も185センチ、85キロ級が珍しくない。

 ともあれ30年以上前と現在の数値は比較しようがない。昔は10年に1人が今や1年に10人の高校生の150キロ級。だが、数値以上に大事なのは打者の体感だろう。73年にテレビで見た作新学院・江川の、バットにかすりもしない手元で伸びる速球が最強。木庭さんの「終速重視」の考え方にもつながるのかもしれない。(宮本圭一郎)