2020.8.28 05:00

【甘口辛口】大林宣彦監督の遺作はまさに玉手箱 2時間59分のエネルギーは最後の執念、詰め込められた映画への愛

【甘口辛口】

大林宣彦監督の遺作はまさに玉手箱 2時間59分のエネルギーは最後の執念、詰め込められた映画への愛

 ■8月28日 少し遅くなったが「海辺の映画館-キネマの玉手箱」を見た。4月10日に逝去した大林宣彦監督(享年82)の遺作で、コロナ禍で当初は命日の予定だった公開日が3カ月以上延期されていたのだが、こんな不思議な映画はそうはない。尾道の閉館する映画館の観客である3人の若者が、1人の少女とともに映画の中に飛び込み、幕末、戊辰戦争、日中戦、沖縄戦、原爆投下前の広島と、時空を超えて関わっていく。

 物語というより、断片的なメッセージの連発。しかし、晩年の主なテーマだった「反戦」は声高ではない。全編ほぼ合成の映像で、自伝的要素あり、映画のさまざまな表現方法を取り入れ、万華鏡か走馬灯か…すべてを詰め込んでガラガラ回したまさに玉手箱。2時間59分のエネルギーは、最後の執念だったのだろうか。

 同じく先週、7月16日に逝った森崎東監督(享年92)の2013年のNHK「記憶は愛である~森崎東・忘却と闘う映画監督~」の再放送があった。認知症の母と息子の触れ合いを描いた「ペコロスの母に会いに行く」を、自ら同じ病にあらがいながら完成させた姿に密着したドキュメンタリー。徐々に失いつつあるなかで「記憶。それは人が生きた証し。その記憶を呼び覚ます力を森崎は愛という」。たとえ亡くなったとしても記憶している人がいる限り、その記憶は生き続ける-。終戦の日の翌日に21歳で自決した、航空隊士官候補生だった3歳年上の兄について語るくだりも。森崎監督の「記憶は愛」のテーマは重い。

 2人の監督が残した映像。大林監督の「転校生」からの作品を思い出しながら思った。遺作に詰まっていたのは、やはり映画への愛だった。(宮本圭一郎)