2020.8.25 05:00

【甘口辛口】藤井二冠「同飛車大学」からの攻めの威力 木村前王位の将棋観を覆したか

【甘口辛口】

藤井二冠「同飛車大学」からの攻めの威力 木村前王位の将棋観を覆したか

 ■8月25日 「歩を指して、ふさし(ひさし)の下の雨宿り」。一手ごとに駄洒落を言い合う「洒落将棋」という落語の小噺がある。「角道を開けて、角道(百日)の説法屁一つ」「角の腹に金が上がって、金角(閣)寺の和尚」…。出ないと一手飛ばしにされる無茶な将棋で、苦し紛れに「じゃあ、オレはふさしの下の首くくり」。

 先日の王位戦第4局。2日目の朝、開封された藤井聡太新王位の封じ手は飛車を切って木村一基前王位の銀を取るオドロキの「8七同飛成」。おかげで将棋界の駄洒落王と異名をとり、同局の副立会人を務めた豊川孝弘七段の鉄板ギャグ「同飛車(同志社)大学」がツイッターでトレンド入りしたとか。

 ほかにも2つの駒に狙いをつけた「両取り(オードリー)ヘプバーン」などの傑作も…。ある高段棋士はいう。「豊川さんは大盤解説や仲間内の研究会ではひたすら駄洒落の連発。同飛車大学は古いギャグでも、若いファンには新鮮に映るのだろう。蘇らせた藤井二冠の8七飛成もそれだけすごかった」

 苦戦になっても、最後の1分将棋まで絶対あきらめない木村が26分も残して投了した。人工知能(AI)が最善と示し「神の一手」とまで言われた「同飛車大学」からの藤井の攻めの威力には、ここまで積み上げてきた将棋観を覆されたのか頑張る力も残せなかったのかもしれない。

 八つぁん、熊さんの時代から将棋の手は洒落になりやすいが、本家の同志社大も公式ツイッターで「本学にも将棋研究会があります」と反応したのは“レベル”の高さを物語る。高校3年生の藤井二冠は大学には進学しないようだが、「同飛車大学」では首席間違いなしだろう。(今村忠)