2020.5.26 05:00

【甘口辛口】「9月入学制」で思いだす「サマータイム」案 コロナ禍での“思いつき”感は否めない

【甘口辛口】

「9月入学制」で思いだす「サマータイム」案 コロナ禍での“思いつき”感は否めない

 ■5月26日 何か似ている、と思い出したのが2年前の「サマータイム」案だ。東京五輪のマラソンなど屋外競技の猛暑対策として夏だけ「時計の針を2時間進める」というもの。占領軍の施政下にあった1948年から実施されたが、日本の風土には合わず3年で廃止された。それが亡霊のように浮上し、議員立法に持ち込む前に頓挫した。

 いま、休校の長期化を受けて導入が検討されているのが「9月入学制」。2012年に東大が海外留学促進のため9月入学を打ち出したが、教育界の足並みがそろわず立ち消えになった。今回は全国の知事ウェブ会議で提案されたが、サマータイム同様、コロナ禍での“思いつき感”は否めない。

 文科省がひねり出した来年9月の一斉移行案では、小学生の場合、対象となる新1年生の人数は1・4倍になり、教員や教室が不足するという。教育分野の研究者で作る「日本教育学会」が、国や家庭への負担が6兆9千億円に達し巨額な財政支出と社会の混乱を招くとの試算を公表した。

 休校中のオンライン教育でさえ地域差があり整備されていない状態なのに、文科省は先走りもいいところだ 東京都内のある高校の校長が言う。「現場の意見も聞かず、上の人たちがイメージだけで判断し押し付ける典型例。今年度の大学入試共通テストに英語の民間試験を導入しようとして準備不足で見送り、恥をかいたことを忘れたのか」

 時計の針を2時間進めるだけで社会は大混乱になるといわれた。5カ月も入学をずらすには世の中の仕組みそのものを変える必要がある。平時に社会全体でじっくり議論するなら分かるが、何もこの混乱期に…。他にやることはいっぱいあるはずだ。(今村忠)